理容師として褒章頂いた師の元
職人歴30年理髪店は、今では京都2店舗に。ともにハサミを握り、支え合ってきたある日、夫が事故により理容師としての道を断たれるという、思いがけない現実が訪れました。
悲しみと戸惑いの中、0.1mmを創る技術の施術をすると言う事は、相当の覚悟を決めました。鋏を握り直し、あの日からずっと、私の中には家族の想いも一緒にあります。
鋏とは、“そり”と“撚り”で髪を整えるもの。そして、髪を整えるということは、その人の心を整えることでもある――。私がこの仕事を愛し続ける理由は、まさにそこにあります。動物も毛繕いがあるのと同様、人も髪に触れるとお客様の表情がほぐれていく、その一瞬に、私の心も救われるのです。
今では全国のセミナーやbarberイベントに参加若い理容師達と技術と想いを交換しあえる機会にも恵まれています。そして誇らしいことに、私の背中を見て育った二人の息子も、この理容の道を志してくれるようになりました。
家族の想い、地域のお客様との絆、そして理容という仕事への誇り。すべてが今の私の支えです。理容室女将として、母として、そして職人として経営者として――これからも京都のこの場所から、“髪を整え、心を整える”という使命を胸に、歩み続けてまいります。